こちらで放射線の事をまとめてみましたが,自然被曝の事例は端折りました。
ま,かえってややこしくなりますので,ここで詳しく掘り下げてみます。題して
^{40}Kによる内部被曝・・・恐ろしい題名ですが・・・
実はこの内部被曝,みんなの体で起こっている放射線被曝の事になります。
自然界に存在するカリウム:K(原子番号19)には^{39}Kの同位体^{40}K,^{41}Kが存在します。この^{40}Kが放射性同位体と呼ばれる放射性物質で,その存在率は0.0117%。
当然,食物には必ずカリウムが存在し,人間にも無くてはならないミネラル要素です。
さて,人体の構成要素としてカリウムがどれだけ含まれるかというと0.2^{wt}%だそうです。ですから,60kgの人間を対象にして考えると
60\times{}1000\times{}0.2/100=120[g]だけカリウムが含まれており,その内^{40}Kはと言うと
120\times{}0.0117/100=0.01404[g]となります。これで人体内に含まれる^{40}Kの量が判りました。
さて,ここからちょっとというかかなり難解な計算が必要になります。上手く説明できますかどうか・・・ネットを駆使ししてまとめてみます。
まず,放射能の量の定義によると
1Bq:ベクレルとは1秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量
でした。そう,^{40}Kの原子核の数を求めなければならないのです。
1モルの物質に含まれる構成要素の総数をアボガドロ数と言いましたが,今はアボガドロ定数と言うらしいですね。
アボガドロ定数=6.02214179\times{}10^{23}[mol^{-1}]
これで放射性核種:^{40}Kの原子核数が求まります。
0.01404/40\times{}6.02214179\times{}10^{23}=2.113771\times{}10^{20}ここで,
毎秒ごとに原子核が自然崩壊する確率は,放射性核種の半減期に反比例する
のだそうです。ですから,^{40}Kの半減期が判れば崩壊する原子核数:Bqが判りそうです。やってみましょう・・・
^{40}Kの半減期:1.277\times{}10^9年 より,
単位を秒に換算すると・・・約4.027\times{}10^{16}秒となります。
ところで半減期の意味ですが,これはあくまでも確率的な話。
残存する原子核数:Nと時間:t\,の間には次の関係があると言います。
\frac{dN}{dt}=-\lambda{}N\space\lambda は核種固有の定数
この微分方程式を解くと・・・確か・・・Nはゼロで無いとして・・・
\frac{dN}{N}=-\lambda{}dt積分して
\int\frac{dN}{N}=-\lambda\int{}dt \Rightarrow\space\ln{N}=-\lambda{}t+C\Rightarrow\space\N=N_0{}\cdot{}\exp(-\lambda{}t)・・・N_0はt=0の時のNの値
ここで,放射性核種がちょうど半分になる時期が半減期だったことを思い出して,
N=N_0/2\,,\,t=T_{1/2} と置くとN\,,\,N_0 は消えて
\frac{1}{2}=\exp(-\lambda{}T_{1/2})これの対数を取って
log_e(\frac{1}{2})=-\ln{2}=-\lambda{}T_{1/2}∴ \lambda=\frac{\ln{2}}{T_{1/2}}
ln{2}=0.693\,,\,T_{1/2}=4.027\times{}10^{16}だった事を思い出して
\lambda=1.721\times{}10^{-17}よって,崩壊する原子核数は
\lambda{}N=1.721\times{}10^{-17}\times{}2.113771\times{}10^{20}=3638となり,約3600Bqと言う事に。この数値を大きいとみるか少ないとみるか。
これだけの放射能が人体内に常時存在するという事です。もう一度,
体重60kgの人体には\red{^{40}K}だけで約\red{3600Bq}の放射能が存在する
その他,^{14}Cでも約2500Bqの放射能が存在しますので,人体は他の放射性物質も含めると約6000-7000Bqの放射能から内部被曝しているのだそうです。
コメント
45年前の高校生時代を思い出してしまいました。
そうそう、アボカドロ定数とかもならった記憶が有ります。
まさか福島原発事故で化学知識が必要になるとはその頃は思っても居ませんでした。
もっと真剣に勉強していたらと今更ながら思うこのごろです。
喜多見梁右さん,こんにちは。45年前に高校生ですか・・・大先輩ですねぇ。
確かにアボガドロ数と言う響きが格好良くて覚えた程度で,こう言う場面で使うものとは・・・いやはや。 😕
真剣に勉強していても,こう言う分野は特殊ですしね。まぁ,一過性の知識に終わるでしょうが,あまりにも些細な事で苦しめられている農家の方々が気の毒で・・・
今,報道されている数値なんか,日常的に曝されている環境を知ればどうって事無いと気付いて欲しいと思い,書き始めています。 😐
私もその計算、しました。
微積は使わず、半減期(秒)を y として、1秒間に崩壊する割合 x を
x = 1 – 10^(log(0.5)/y)
としました。
つまり、(1?x) を y 乗すると、0.5になる、と言う考え方からです。
高校生は40年ほど前です。
炭素もそんなになりますか。
14Cの含有率があまりに少なかったので、パスしちゃいました(^_^;
放射性物質の放出がひどくならないこと、なるべく短期間で収束することを祈るのみです。
あれ、なんか文字化けしました。
つまり、(1 – x) を y 乗すると、0.5になる、と言う考え方からです。
と、書きたかったのです。
マコさん,はじめまして。なんとマコさんも先輩ですね。少し。 😮
> 微積は使わず・・・
そう,本当は「判って」使っているわけではありません。どのタイミングを取っても同じ比率
で減少していくからこう言う式になる。と勝手に納得しています。
で,マコさんの考え。今,元の式に戻してなーるほど・・・と大きく頷いたところです。
いや,エレガント!(数学セミナーを思い出します) 😛
しかし,この式の意味が理解できません。 🙁 半減期が1秒なら・・・
ところで,14Cからの被曝が意外に大きいのは,
14Cは存在比率は小さくても,単純に人体には炭素が23%も含まれているからでしょう。
単純に40Kの115倍! 😉