Nh – Nihonium / ニホニウム

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原子番号113の元素記号は長らくUutでした。そして2015年12月31日に理研の研究グループに命名権が与えられ,今年の6月8日22時30分,理研案の「ニホニウム(Nh=’Nihonium’)」が名称案として公表されました。11月頃までパブリックビューが受け付けられ,よほどのことが無い限りこのまま決まる予定です。


Unt=’UnUnTrium’(ウンウントリウム)とは・・・つまり,1,1,3と言う意味で,IUPACが定めた「元素の系統名」のルールに則って113番元素をこう呼んでいます。1978年時点で発見されてはいるものの,いろいろごたごたがあって未だ命名されていなかった104番元素のRh(ラザホージウム)から順に付けられています・・・104番元素はUnq=’UnNilQuadium’(ウンニルクアジウム)。

そう言えば,私が周期表で目にしたのは103番元素のLr(ローレンシウム)が最後でした。最近の周期表は112番元素まで書かれていますねぇ。(114番と116番元素のFl,Lvが載せられているのも目にします)

元素記号は1,2or3文字の英字という命名ルールになっています。「3文字?」と思われたでしょうが,この系統名がそれに当たります。

この系統名については先のリンクに詳しい説明がありますので,ここではスルーして先へ進みますね。


1997年にやっと米国にUnqの命名権が与えられて,Rhとなってから,次々と新元素が発見(正しくは合成,融合),命名されてきました。一方,92番元素のUより元素番号の大きい元素を「超ウラン元素」と呼びますが,その命名権を得ている国はと言うと・・・米,露(旧ソ),独の僅か3ヶ国だけです。そこにきて今回の「113番元素の命名権を日本の理研が得た」と言うことがどれほど凄いことか。

アジアで始めてと強調して報道されていますが,世界で4ヶ国目と言うことの方が重要です。

また,最近の新元素発見には,常に理研のデータが検証のための裏付けとして利用されていると言う事も誇らしい限りです。

そこには苦難の歴史と,努力,忍耐と言った涙ぐましい日本人ならではの裏話があるのですが,中でも小川正孝が1908年に発見したとされる「ニッポニウム」が有名ですねぇ。当時は43番元素を発見したと思われていましたが,再現がされない事から命名権を得るには至りませんでした。

その29年後,米国が加速器を使って43番元素が作られて,1947年にTc(テクネチウム)と命名されました。

後に,小川が発見(精製,分離)したのはこのTcでは無く,周期表ではその一つ下に入るはずのRe(1925年に独国にて発見)だったと言う事が判明し,Tcも不安定且つ非常に存在しにくい元素だったため,小川の頃の技術では見出すことが出来ないで間違ってしまったようです。本当はReを見つけていたというのに・・・

この時に提案された元素名「ニッポニウム」は,混乱を避けるためにその後の使用は禁じられ,元素記号「Np」は,1940年に米国(マクミラン等)で発見された93番元素に対して「ネプツニウム」と言う命名権と共に付与されました。

実はこの93番元素「Np」にも日本が係わっていて,同じ1940年に日本の仁科芳雄が加速器を使って生成していたかも知れないとされています。しかし,単離に成功しなかったために米国に持って行かれました。当時のルールでは,仁科が単離に成功していればNp=’Nipponium’(ニッポニウム)となっていたはずです。因みにマクミランはこの功績でノーベル化学賞を受賞しています。


最後に,この「ニホニウム」という名称ですが,賛否両論・・・かくいう私も当初は反対でした。

私の場合は非常にミーハーな理由になるのですが,

J or Jp = ‘Japonium’(ジャポニウム) ・・・ 周期表初の「J」が登場!

でした。「ジャポニカ」「ジャポニカ米」「ジャポニカ百科事典」など耳障りも良いですし。

しかし,発見チームのリーダー:森田浩介氏の話を聞いて,なるほどと感銘を受けました。深い話です。

水兵、リーベ…ニホニウム! 新元素命名、森田浩介氏の会見詳報 「周期表の一席、大きな意義」(1/3ページ)
理化学研究所のチームが発見した新元素の名称案「ニホニウム」の公表から一夜明けた9日、チームを統括した森田浩介グループディレクター(九州大教授)が埼玉県和光市…

IUPACのニュース本文には

Nihon is one of the two ways to say “Japan” in Japanese, and literally mean “the Land of Rising Sun”. The name is proposed to make a direct connection to the nation where the element was discovered.

とあります。「日の本」とせずに「日出ずる国」としたのには,何故か(たのしげな)作為を感じています。


さぁ,これで(長)周期表の第7周期まで全て埋まりました。このタイプの周期表では,これ以上表にするには無理がありますから,この完全なる長周期表を覚えてしまえばほぼ完璧。118元素までです。

そして,113番元素は永久に「Nh」・・・ニホニウムとして全世界に覚えられていく事になります。

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